シカクからガケへ@大阪中津/京都出町柳。

 

町のパン屋さん」のような出版社ができないだろうかと、考えるのである。どこの町にも一軒くらいは「こだわりのパン屋」があるだろう。家族経営で、石窯で焼いた手作りパンを売っているような。宮崎駿の『魔女の宅急便』に出てくるグーチョキパン屋とか、そんな感じだ。ご主人が奥でパンを焼き、奥さんが店に立ってパンを売る。奥さんが身重になると、女の子をバイトに雇って店番を頼んだりして。 −たけくまメモ 「町のパン屋さん」のような出版社 より

ITの躍進は紙媒体を殺す。本当だろうか? 確かに小回りのきかない大手出版社は劣勢になるだろう。しかし、ITは同時にDTPを手軽なものにした。このことは、個人やミニコミ出版社にとって有利に働いている。そう、まるで街のパン屋さんのように、店主やその知人が作った本を棚に並べる本屋があって良いのだ。そして事実、街のパン屋の方が、デパ地下のホコリまみれのドンクなんかよりも、おいしいじゃないか。出来たてのパンは、近所のパン屋でしか食べられない。あつあつのパンを頬張って初めて、パンは生ものなのだ、これに勝るモノはないなと悟る。本にしても、そういうところがあると思う。ポップや小冊子とメジャー誌の間を埋めるような出版のかたちがあると思う。まだ、みんなが気付いていないだけだ。

kamisanの記事にある大阪中津のシカクにその息吹を感じることができる。中津商店街。シカクという明確な意思を持つ者だけが、この退廃的な結界を超えて中に入ることが出来るだろう。そんな異境で、私はこんなものを買ってきた。以下に紹介していこう。

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kalas翼のある小冊子は、三重県を中心にした地域情報紙。もちろん三重県目線で他の地域も紹介している。例えば、この21号は、奈良の大和郡山が特集されている。uraraのパン屋の場所だ。写真、文章、編集もプロ顔負けである。っていうかプロでしょ。600円なり。

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別冊少女パルチザンは、キムタクと谷亮子とAKBと浅野いにおと109が大嫌いな文化系女子の欲求不満が爆発した小冊子だ。単にメジャーなものがキライなだけじゃないかw で好きなタレントは?って聞いたら、加瀬亮と蒼井優なんだって。うーん・・・。思うに、この本を生み出す原動力は、単なるメジャーへの嫌悪ではないと思う。実際のところは、メジャー消失へのとまどい、終わりゆく東京への動揺こそが作者達の真のカタルシスなのだ。以前、私が批判した林真理子のそれに似ている。それはvol.2の峰岸あゆみの記事「東京がつまらない・・・。」に集約される。


ぜ〜んぶ同じです。しかも、大きな商業施設内に上記の店舗(※マクドやスタバなど)があるのに、同じ街の中に、それとは別に独立した路面店もあったりします。また、どの街にも似たようなカフェと雑貨屋さんが増えました。そして極めつけは、ドラッグストア、家電量販店とドンキホーテ。これもどこにでもあります。つまり、新宿、渋谷、池袋、銀座、上野、吉祥寺と、みんな同じような景色になってきたのです。(38頁)

 
 
東京が郊外化しているのだ。都庁で「ビックロ」の紙袋をさげて歩くドイツ人のおっさんの背中が寂しかったなあ。なんとなくドイツ人だと思った・・・。少女パルチザンの敵は、もはやイケイケの資本主義帝国ではなく、世に跋扈する悪しきB級金太郎飴ストアであり、彼女たちはこれに善きB級を突きつけるのだ。1冊500円のゲリラ戦、否、パン屋さん的てづくり出版なり。

シカクの店員さんに、こんな商売があるんですねって聞いたところ、東京ではサヨク崩れが結構ローカル出版でがんばっているそう。ミニコミ文化は、大阪よりも東京に分があるという。ただ、明日のコミケはもう、なんか違う文化になっちゃったなと思うけれど。関西でも他にこんな感じの店はないのかと尋ねようと思った、その矢先・・・

足下ふくろはぎに、もにゃっとただならぬ感触。不意に、いやんっという声とともに視線を落とすと、 床にいた三毛猫が私のトートバッグをくんかくんかしている。そして、ちらっとこちらを見てボソリと言う。「京都、ガケ書房」。え、あの百万遍の近くの?と聞き直すが、猫はそっぽを向いて奥の丸テーブルの上に飛び乗る。その時、首輪の鈴が小さくチリンとなった。その後は、まるで置物のようにピクリとも動かない。

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後日、猫の声に導かれるように、奈良から近鉄、丹波橋で京阪に乗り換えて出町柳駅に着く。京都大学周辺の街並みは、冷たい雨がふる冬の午後でも、マイペースな下町情緒で私を出迎えてくれた。ガケ書房はここから東へ徒歩20分の距離だ。その途中にいたヘタウマ地蔵。なんだこれ。

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あまりに寒いので、とある喫茶店でカレーピラフを頼むが・・不味いw やはり学生の街は質より量なのか。いまいちHPが回復しないまま、再びガケ書房を目指す。そんなこんなで到着、これがガケ書房なり。傘持ちながらカメラ撮るのってつかれるわあ。。。

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店構えからして狂ってる。まあ、となりに京都造形芸術大学があるので、この界隈ではフツーなのだろう。店内は、意外にも落ち着いた高級な雰囲気。品揃えは、メジャー誌、マイナー誌、古本、CDがほどよくブレンドされている。

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ガケ書房ではこんな本を買ってみた。「なんとなく、クリティック」は浅野いにおの「プンプン」論評あり。「殆ど無い」はクイックジャパン的な方向性。「REPLAY」は90年代生まれのカルチャーカタログ。映画とかゲームなど、この世代の頭の中が何となく分かった。しかし、ここでしか買えないと思うと、つい財布のヒモが緩んでしまうな。ガケ書房はちゃんとサンプルが立ち読みできる点が良い。なので片っ端から読んでみた。いろんな制約があるなか、どれも色々工夫しているなあと感心。

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ならねこ編集長目線で語ろう。雑誌版ならねこは、左開きの横書きにしようと思う。あと内容的には男女双方が読んでヨカッタと思えて、読んだ後も本棚においておきたくなるような装丁を目指す。三重県の「kalas」、長野県の「街並み」を軽く超えていきたいね。下品なサブカルとかなかよしこよし地域情報紙にはしたくない。うん。1000円で、どお?
 
 

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