千里ニュータウンの現状と再生を見る(1)

 
 
Hitomojiです。

北摂に詳しい不動産営業マンは「千里ニュータウンは成熟した町だ」と言っていた。成熟って何だろう。千里ニュータウンのド中心・新千里東町を歩いてみることにする。

千里ニュータウンは、1962年、高度経済成長に伴って、吹田・豊中市に作られた大規模郊外団地である。丘陵地帯にある千里ニュータウンでは、駅とマンションの建つ高台をそのまま歩道橋を繋いでしまって、幹線道路と歩行者との流れを分ける作りになっている。坂が避けられない地理状態とはいえ、行政もこうした構造上の問題を克服しなければならない。千里ニュータウン周辺地域の高齢者の割合は30%をついに超えた。人の高齢化、住宅の老朽化、高齢者にとって住みづらい街であるということが行政の目先の課題である。 022

2001年、町の再生の為に寄せられた市民の声を見てみると、幹線道路から交通の侵入や景観の悪化を避けたい、という声があり、安全で安心なユートピアという幻想が垣間見える。どの層の人がこれを作成したかは分からないし、今はまた状況が変わっている可能性もある。しかし市の発展のためというよりも、後ろ向きで排他的な、ユートピアを死守するような共有意識がありそうだ。
実際に赤色のルートを歩いてみる。
[mappress mapid=”261″]

安全面の考慮だろうが、通り抜けのできる道が少ない。マップを見ても工事中のところや立ち入り禁止になってるところがあってよく分からないので、部外者は新千里東町をぐるっとエリアを迂回して違う地区に抜けなければならない。特に中国自動車道を挟んだ北(新千里東町、赤色に囲まれたエリア)と南(上新田)へは通り抜けの出来る歩行者道がなく、いったん駅まで出るしかない。

季節のせいだろうか、主婦・小学生・高齢者の人通りが多そうな15時ごろの時間帯でも人通りがかなり少なかった。建設業者と私だけのような気がしてくる。

ここ数年、旧団地が建て替えられた新築分譲マンションエリアに、そうした排他的なユートピアの再生産を見た。マンションの外周を堀のような庭園に囲まれていて、どうやら外からは入れないらしい。中へ入れるのは正面玄関か、マンション裏の公園部分の橋や限られた小道からで、もちろん正面にはオートロックという門番がいる。
033

[mappress mapid=”262″]

(印が撮影ポイント)

○○ガーデン、リバー○○、ジオ○○という名前のつけられた新しいマンションの中には、こうして外周を緑や人口水路で囲んでしまうものや、柵や壁で要塞化してしまうものもある。ここ、新千里東町の千里東公園周辺には、「緑を含む開放的な都市生態系」とも言わんばかりのデベロッパーの夢が実現されているが、要塞の中の要塞住宅に解放感があるだろうか。

分譲マンション群を抜けると、道路挟んで向こう側に立派な戸建住宅が見える。このエリアは高齢者交通安全地区で、車道と歩道が植え込みを挟んで完全に分離されている。相変わらず、反対側に渡るには長いこと歩くか、歩道橋を渡るしかないけれど。

要塞の中に要塞を作る、つまり千里ニュータウン内部での高齢者や単身者、低所得者層を締め出すことだ。新しい分譲マンション群からさらに東へ進んだ旧府営団地周辺は、学校、郵便局など生活の中心となるはずの地域である。しかし高級マンション街を一歩抜けるとスーパー、地区センター、住宅から全て老朽化していて、まるっきり見捨てられている。
043046
気がつけば、高級マンションではなく、手ごろな大きさのファミリーマンションが目に入るようになっていた。

見捨てられた新千里東町地区センター内部にひがしまち街角広場というのをみつける。
045

誰でも気軽に休憩しに来れるコミュニティスペースらしく、お気持ち料100円で飲み物をいただいた。高齢者の方が主に利用されていて、隣の小学校の子どもも来たりするんだと嬉しそうに話してくれた。コミュニティスペースが活用されることは良い変化なのかもしれないが、街全体を覆う余所への不信感と過度な共感性を見ていると、誰の意思なのか、全員が本当にコミュニティ化を望んでいるのか胡散臭く感じてくる。ちょうど下校時間の小学校の前を通ると、下校誘導のスタッフさんたちが早い帰宅を促していた。

中国自動車道を超えれる道を探すべく、UR団地の周りを一周する。駐車場は結構な空き具合で、洗濯物以外の生活感のない、均一に与えられた住宅が見える。成熟した、安全で、安定した町。異質な者が見えない町。住めば都なのかもしれないが、ともすれば爪弾きにされてしまいそうな冷たさが見えた。
次回は千里中央南部へと降りてみよう。

―――――――――――――――――
ひがしまち街角広場
月~土曜日、日祝定休日
午前11時~午後4時

千里ニュータウンまちびらき50年 記録サイト

2012年~

「千里ニュータウンの再生を考える市民100人委員会」報告書/吹田市ホームページ

2002年、公募市民と吹田市連携による調査、議論報告書。

千里ニュータウン資料集/吹田市ホームページ

2013年、吹田市・豊中市千里ニュータウン連絡会議による人口推移等の報告書

2 thoughts on “千里ニュータウンの現状と再生を見る(1)

  1. jpg画像を地図に差し替えました。

    千里ニュータウンも単純に高齢化が問題なんじゃ無くて、自動車が運転できなくなると、ここは限界集落になって、難民化してしまうんだよなあ。。。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください