暴動としてのダンス
:映画『RIZE』

 
はじめまして、hitomojiです。私はとあるブログでいろいろと映画の話をしていたことがあるのですが、「ならねこ」でもやっぱり映画の話ですw 映画のなかの街並みや風景に注目しろと言われましてもねえ・・・

ということで今回は、黒人発祥のダンス:クランプを踊る若者たちを追った、ドキュメンタリータッチの映画『RIZE』を紹介します。

あらすじ:カメラが追うのはピエロの格好をしたダンサー:トミー・ザ・クラウン。彼は麻薬売買の前科を持ちながらも、エンターテイメントとしてのダンスをサウスセントラルの人々に提供していた。だがそこで、主人公の弟子であるタイト・アイズによるクランプダンスが台頭し、これが主人公のクラウンダンスに対抗する勢力となる。クランプ一派は銃の代わりに激しい踊りでクラウン一派を挑発していたが、次第にその確執が襲撃事件にまで発展していく・・・

さて、このサウスセントラルという地域は、1992年ロサンゼルス暴動の火種となった地区です。もともと黒人が多く居住する地区でしたが、ヒスパニック系、韓国系が増え始め、人口が増加しました。それまで黒人が所有していた商店を韓国人が取って代わり、そして単純労働を賃金の安いラテン系が取って代わっていったのです。韓国系アメリカ人の増加は、韓国系による黒人差別の強化と同時に彼らの職を奪うこととなりました。ロサンゼルス暴動はこうした黒人差別の人権問題と、彼らの職や生活区域が徐々に他人種に取って代わられることへの憤りという重層的な怒りが根本にあります。

 
この映画が制作されたのは2005年ですが、9.11以後だというのにロサンゼルスは未だ暴動の爪痕を残しています。作中の街並みは一見長閑に見えますが、いたるところに武装した警官が配置されています。少年は銃を手にし、あるいは路地裏では怒りや憤りを抱える黒人たちがダンスバトルを繰り広げます。サウスセントラルの多くの若者たちは何の疑いもなくただクールになるためだけに銃を手にしてギャングへの道を歩み、多くの若者が命を落としていきます。トミー・ザ・クラウンはそうした問題に立ち向かうために、暴動のかわりにダンスをすることによって、若者たちを率いようとするのです。

作品の中で、彼らの内面的な語りは少ないながらも、ただ彼らの身体の動きの力強さ、荒々しさがお互いを威嚇する様子が丁寧に描かれています。
根深いブラックミュージックのルーツと強靭な肉体をもつ黒人が唯一ヒスパニック系、韓国系に打ち勝てる方法なのかもしれませんが、そのようなナラティヴは作中の一部にすぎません。彼らの暴動とも言えるダンスは、すでに人種や経済状況の問題を超えた怒りの発露に達しており、これを見た当時、ただ呆然としてしまったのを覚えています。

ただし、サウスセントラルの町並は、あからさまに危ない風情でないのが不思議ですね。日本だと明らかに治安が悪そうなスメルが漂ってくるような気がします。
同様の韓国人と黒人とのNY・ブルックリン地区での対立をテーマにした『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年、スパイク・リー監督)も是非合わせて見ていただきたいと思います。

One thought on “暴動としてのダンス
:映画『RIZE』

  1. なんかアメリカのスラムも大変だなー、ってどころぢゃないですね。「サウダーヂ」っていう邦画みました? 私は見てないんですが(^^;) 日本の郊外もスラム化しているんですけど、あまり話題にならないですねえ。。。

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