京都人による京都観光(中編)。
(続き)
さて、西大路通りに出るが、特に何もない。そもそも、この道を歩いてどこかへ行くという気になれない。京都市内は歩いて散策すべき道と、さっさと次の目的地へジャンプした方が良い場所がある。京都なんだから、歩けばなにかあるに違いないと思うかもしれないが、ないものはない。そんなことをしても、残念な気持ちになるだけだ。
ということで、私は信号待ちをしていたタクシーに乗り、今宮神社を目指すことにした。北大路通りは観光シーズンでも空いており、ワンメーター+α程度の金額だった。そもそも、今宮神社はタクシー以外では行きにくいし、だからこそ、ここは穴場だとも言える。
[mappress mapid=”307″]今宮神社は、去年死んだ私ばーちゃんの結婚式場だった。休日の割には人が少ない。これだけで京都っぽい趣がある。今宮は「玉の輿」で有名な神社だけど、ばーちゃんはいろいろ苦労したと思うw
保育園のころから、じーちゃんとタクシーで頻繁にここへ来ていた。目的はあぶり餅だ。当時は、じーちゃんは甘いもんが大好きだなーぐらいにしか思っていなかったが、彼にとっても大切な場所だったわけだ。石畳の両サイドに「かざりや」と「いちわ」がある。理由はよく分からないが、じーちゃんは「いちわ」(入って左の方)の店にしか入らなかった。私も理由はないが「いちわ」にしか入らない。おそらく味は同じだと思う。
死ぬ前に何を食べたいと聞かれたら、私はあぶり餅と答えるだろう。
きな粉が焦げた香りに白ミソの甘み。ここでしか味わえない。かつて、死期が迫るじーちゃんにこれを見舞いに持って行ったら「おお、また今宮、いこ、いこ」と泣きながら食べていたっけ。