京都人による京都観光(前編)。
京都で暮らす者にとって、阪急電車はもっさい地下鉄だ。西院で降りるとゴキブリが焦げた臭いがするし(ニュアンスだ)、朝のラッシュ時に大阪方面に向かうときは阿鼻叫喚のすし詰め状態になる。京都人にとって阪急は「最低限度の生活の移動手段」でしかない。しかし10年前、神戸で暮らして初めて気付いたのだが、神戸では阪急はハイソな乗り物なのだ。同じ関西でも、街によって全然文化が異なることを思い知らされた。
神戸の後、大阪に7年、奈良に1年と関西圏の特色ある街で暮らしてきた。そこで、あらためて京都という街を「観光客気分の地元民」という体裁で紹介できたらな、と思う。
小学校1年まで金閣寺の近くに住んでいた。だけど、私には金閣寺に関する記憶がない。神戸の人が異人館に行かないように、京都の人は金閣寺なんかわざわざ見に行かない。金閣寺が持つ華やかさと胡散臭さの二面性は、“おもてなし用”の京都ブランドそのものを体現している。まあそんな批評めいた話は脇におくとして、せっかくの天気だし、また当分京都にも帰らないだろうし、あえてベタに観光客気分で金閣寺を見てみるのも悪くないかも。そんな次第。
[mappress mapid=”306″]今回、いろんな場所を廻りたいのでタクシーを多用した。西院で阪急を降り、そこからタクシーで直接金閣寺へ行く。観光なら、わりきって市バスよりもタクシーの活用をオススメしたい。観光シーズンの京都の大通りは慢性的に渋滞するので、貴重な時間をバスの中で浪費することになる。渋滞の西大路通りはサイアクだ。
タクシーなら、西院から金閣寺までなら二十分で1300円くらい。ただし、京都でタクシーに乗るときは「ショートカットして」と言うべきだ。もし良心的な運転手なら、何も言わなくてもそうしてくれる。普通の運転手なら「希望の道順はありますか?」と聞いてくる。これは京都風に解釈すると「おまえって地元の人ぢゃないよね? 遠回りしても怒らないよね?」っていう意味なので、あなたは「ごめん、めっちゃ急いでるから信号少なめの裏通りから行って」と言うのが賢明だ。
さて金閣寺到着。お札が入場券だなんて粋だねえ。まあ、宗教を盾にした税金対策なんだけどね。お札は明らかに非課税。拝観料はグレーゾーンだから。
金閣寺のアップ、意外と安っぽいと思った。遠くから眺めるのが丁度良い。ところで、金の茶室を作った秀吉は俗物だと嗤われる日本の美意識において、なぜ金閣寺は日本の代表的建築物なのか?と外人に尋ねられたとき、あなたならどう答える? 私はこれの事情を知っているが、書くと長くなるのでこれに関しては機会を改めよう。
金閣寺の出口近く、しょーもない土産物屋の並びがいきなり出てきて、一気に興ざめする。金閣寺限定キティなどは観光バスの駐車場で売れよな。このあたりのイメージ・コントロールの適当さに金閣寺の痛さを見てしまうのだが。
否、だってこんな歴史的にも胡散臭いキンピカ寺、バカしかこねえじゃんw ゴージャスなお寺のテーマパークでいいんだよwっていう金閣寺側の居直りなのかもしれない。金閣寺の裏の観光バスの群れを見てそう思う。実際、彼らもそういうので満足してるっぽいし。観光客は、7割が外人さんだった。
京都人から最も遠い寺、金閣寺。じゃあ、京都人が好きな京都ってどこなんだろうか、と漢字だらけの変なTシャツを売る土産物屋を尻目に西大路通りを目指す(続く)。