古今2ちゃんねる。

 

8年ほど前、世間ではmixiが社会現象になりかけていて「匿名の2ちゃんねるは終わった」とよく喧伝されていたっけ。その当時、私はSNSも2ちゃんねるも共存していくと思ったけど、ある程度あたったと思う。そして現在、もう2ちゃんねるは、すでにネットコミュニティの役目を果たし終えたと思っている。さて、もっと昔の黎明期のネット環境に関しては次の本がオススメです。

ぱるぼら『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』翔泳社、2499円。

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文字通り、こういうのが本当の歴史書だと思う。2ちゃんねるの設立背景なんかも詳しい。私個人の2ちゃんねるの思い出としては、10年くらい前かな、正月に歌番組ザベストテンの復刻を生放送でやっていたんです。お祭りムードのスタジオで、黒柳徹子が中森明菜にお餅を「はい明菜ちゃん」ってあげたんだけど、中森明菜が「ん、あたしお餅ダメなんです」と言って食べない(笑)。 ちょ明菜空気読めよ。それを見て、私は思わずお雑煮を吹いたんだけど、お汁が飛んだ目の前のThinkPadの2ちゃんねる実況板でも、コントみたいな受け答えを素面でやる中森明菜に大ウケなんですね。

いつだっただろう。徹子の部屋にフェミニストの上野なんとかっていう東大の先生がゲストに出てたんだけど、受け答えの態度が人としてサイテーなのね。おまえは何しに来たんだレベルでクソなんですよ。これは2ちゃんでも祭りに違いないって思って、実況スレッドを開いたら、普段は徹子のトークを小馬鹿にしていた2ちゃんねらー達が、みんな徹子を応援していた(笑)

なるほど、テレビを介してネットの向こう側の人たちと「つながる」ってこういうことなんだ! 2ちゃんねるって面白いなー、ってあのとき実感しましたね・・・遠い目。

定額制の高速回線が普及していくなか、テレビを見ながら2ちゃんねるでワイワイやるっていうスタイルが確立していった。ネット・ヘビーユーザーからすれば、この時点でもうテレビ番組の存在価値は大きく変質したんだと思う。「シラケつつ、ノル」という、80年代のテレビを中心としたメディア環境の均衡が失われていった。そして、ゼロ年代以降では、テレビは端的にシラケの対象でしかなく、それを揶揄する形で「テレビにシラケつつ、ウェブでノル」という形になった。ニコニコ動画や生放送は、もうテレビすら要らない。

ネトウヨにしても、本来は、学校によくいるマヌケな左翼教師に対するカウンターとしてあった。不勉強なのに権威を笠に着ていばっている老害を、機転の利くガキがおちょくる構造がそこにはあった。知的にも「歴史は一つではない」という知識の相対化が、その本質にあったと思う。

だけど今は違う。おいらネトウヨだから憲法改正賛成! おいらネトウヨだから左翼が反原発らしいんで原発賛成! 愛国心あれば戦争も辞さないって当前じゃん! でもおいらが前線でドンパチやるのは御免こうむる。自衛隊がやればいいんじゃね、ってアホか。厳しい言い方だけど、いまやネトウヨであることは、スクールカーストの底辺だったような連中の最後のより所だ。

まあ、それだけならカワイイもんだ。近年では「中の人」にも明らかな偏向があって、記者制のもとで最低限の秩序があったニュース板ですら「原発再稼働しないと日本経済は回らない」みたいな記事がトップの方に出てくる。もちろん、そういう論調の記事自体はあってもいい。しかし、そのニュースの引用元が某新興宗教のサイトなわけ。それは公的なニュースじゃなくて、私的なオピニオンです。記者も確信犯的にやっていて、2ちゃんねるはジサクジエンを記事の投稿レベルでやっちゃっている。

かつての2ちゃんねるなら、もうこの時点で炎上しているし、その記者は追放されたと思う。でも、今はだれもこれを問題視しないんだよね。ゆとりは疑う事を知らんから、検索能力も低いままなんだ。そして安直な権威主義によりかかる。ニュース・ソースへのツッコミが不在なまま「うん、やっぱ原発必要だよな」とか言っている。

社会とか経済とか国家とか、本当はそんなもの、彼らにとってどーでもいいわけ。そんな平和ボケを肯定してくれる毎日が欲しいだけだ。なので原発を稼働すれば、「あの日」以前の、平穏な日常を取り戻せると思っている。無根拠にそう思っている。私に言わせれば、それは、社会レベルで幼児退行が起こっているようにしか見えない。

右翼/左翼というカテゴリーは、とても都合の良いもので、その人の教養、IQ、民度を全部ふっとばせる。まるで評論家になった気分で偉くなった感じがする。身の程を錯覚させてしまうワイルドカードだ。しかし、そんな虚勢こそ、女の子がイラッとくるイカ臭い俺様ポエムではないか。宮台真司風に言えば、右翼だろうが左翼だろうが、バカはバカです。

 

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