『ウルフ』と『フラッシュ・ボーイズ』。

 

高校の社会で習う、あのワルラスの市場均衡理論はあまりにも抽象的だけど、ワルラス自身は証券取引所をモチーフとした数理モデルだったようだ。つまり、あの理論の登場人物には売り手と買い手だけでなく、その仲買人であるオークショナーが存在している。連立方程式が首尾良く解かれること自体がオークショナーの存在そのものなのだ。理論上のオークショナーは、サッカーの審判よろしくすべてのプレーヤーに対して公平で、不正など働かない透明な媒介者だ。さて、それでは現実は?

映画『ウルフ』(小説は読んでいない)では、金とドラッグとセックスにおぼれたインチキ・トレーダーの半生をデカプリオが演じている。面白かった。でも、モダンなスクリーンのイメージとは裏腹に、この時代はあくまでも90年代だ。すなわち取引の主役メディアは電話なのだ。詐欺の手口が営業トークというのは、やはり20世紀のトレードだと言える。

これに対して、映画化も進んでいる『フラッシュ・ボーイズ』はモダンだ。ハイテク犯罪の臭いがする。もっとも、法律はITの進化に追いつけないので、今のところ合法的な「後出しじゃんけん」だけども。AIが光ファイバー上の取引情報に高速にアクセスし、マイクロ秒(ミリではなく!)のスキをつくのだ。これが陰謀論でもフィクションでもなく、リアルの証券市場の実態なんだから、びっくりですねえ。

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