神戸の商店街。

 

神戸では5年ほど暮らした。それは震災から立ち直り、神戸らしい街並みを取り戻していく頃だった。京都出身の私からすれば、閉鎖的で古くさい伝統しか売るものがない京都よりも、神戸の方がオープンでハイカラな印象があった。
 
実際に暮らすと神戸は確かにそういう街なのだけれども、その一方でJR元町駅の高架下にあるアングラな雰囲気や、センタープラザの着物のとなりにギャルの服を売っているような脈略のない雑居ビルの存在は意外だった。地元の人に聞くと、震災前の高架下は、もっと泥臭くて、怪しくて、いい感じだったそうだ(笑)。
 
ただし、こういう泥臭さを許容しながらも、神戸という街はそれをできるだけ覆い隠そうとする。あくまでも神戸の商業文化は小ぎれいでモダンな百貨店がその中心にあり、闇市っぽいものや路地裏的なものは脇へ追いやられ隠される。具体的には三宮・元町界隈の中心には大丸があり、これに合わせるような形で三宮センター街がサブ商圏を形成している。
 
同じ大丸でも、大阪の大丸が、ごちゃごちゃした心斎橋筋商店街の中に窮屈そうに店を構えているのとは対照的だ。大阪の大丸なら、Tシャツに短パンのおっさんがウチワあおぎながら入っても許される雰囲気がある。、神戸の大丸なら、それはちょっと勇気がいるだろう。どちらが良い悪いではなく、これこそ街の文化や個性なんだと思う。
 
ちなみに奈良には巨大な商業の中心が存在しない。だから、チェーン店ではない小商いの商業集積が、マイペースに温存されている。これもまた希少価値の高い文化だと思う。

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