もう一つの野生。
今年の1月、高畑の禰宜道で出会った可憐なバンビ(下記の動画ラストシーンに登場)。
この半年、わたしの中では高畑のマスコット的存在だった。
小さいながらも機敏な動きが可愛さに拍車をかけていたからだ。
厳しい冬をうまく乗り越えて、これから良い感じに成長していくだろう。
これからもコイツにモデルになってもらおうかな・・・
そう思っていた矢先だった。
昨日、禰宜道に行くも、いつものグループにこの子だけがいない。
しばらくして、ふらつきながら姿を見せる。
これまでは決して、私の手が届く範囲までは近寄らなかったのに、
よろよろと足下まできて、小刻みに震えている。
ポケットから出したニンジンを私の手から直接食べる
本来、高畑のシカは半野生なので人間の手から直接ものを食べない。
虚ろな目でニンジンを弱々しくほおばる姿に、胸騒ぎがする。
すでに仲間からも見限られているようだ。
小さな野生動物の死がせまっている。
だが、ここでもう一つの野生、奈良公園のシカ独自の生存本能が目覚める。
死を悟ったシカは、人間を親のように頼ろうとするのだ。
去年も浮見堂にそんな子がいたし、今年もいる。
しかし去年のバンビは、けたたましいセミの鳴き声のなか、
荒池の芝で独り眠ったまま、目を覚ますことは無かった。
人なつっこいだけに、死んでしまったときのショックは、大きい。
この高畑のバンビも、いつか私の手からニンジンを食べてほしいなとは思っていたけど、
まさかこういう形で距離が縮まるとは思わなかった。
食欲自体はあるので、なんとか持ち直してほしいと願う今日この頃。