カメラ雑誌のシカ写真について思うこと。
本屋でカメラ雑誌をぱらぱら立ち読みしていると、
奈良公園のシカ写真が散見される。
しかし私は、それらの写真にイマイチ納得がいかない。
編集は東京の連中だから、奈良公園のことがよく分かっていないのだろう。
例えば、まるで「もののけ姫」にでてきそうなそのショットは、
実は真隣が国道で、ひっきりなしのトラックの騒音で興ざめな場所だったりする。
そもそも奈良公園内のシカを大自然っぽく撮ること自体、ちょっとうさんくさい。
そんなもの、東京の田舎者はだませても、奈良市民にとっては白々しいフェイク写真でしかない。
大自然のシカを撮りたければ北海道か海外に行けばよいのだから。
奈良公園のシカは人間社会と折り合いを付けて生きるという、世界的にもたぐいまれな習性を獲得した動物だ。
この事実をどう切り取るのか、が写真家の腕の見せ所だと思う。
他方、SNSの写真にありがちな、シカを玩具のようにして小馬鹿にしながら、
強引にシカとの自我撮りをしてる素人写真にも興ざめである。
シカを小道具にしか思っていない。歪んだナルシズム。
そういう思いやりのない、自己中心的な撮り方をする人間は、実はシカだけでなく、人間相手にもそういうことをやるんじゃないか。
たぶん無意識的にやっている。
奈良公園のシカの撮り方が、その撮影者自身の人間性を写しだしてしまうのだ。
さすが神の使い。ただの天然記念物では、ない。