飛田でモーニング。

 

ロケハンかねて、阪堺電車の駅をストリートビューで調べてると、もう一つの大阪が姿を見せる。グーグルの中の人は、ちゃんと事前にその筋の方々に「あいさつ」しに行ったのかなあ、とか。それともストリートビューみたいに早朝の飛田だったらロケしても怒られへんかなあ、とか。いろんなことを思いめぐらしながらネットで探検してみた。

ストリート・アートです。

立ちションすな。

歓談中。電信柱の影から見て、早朝だよね。

ところで、東京の人があまり知らない橋下徹氏ことでも書こうか。そもそも彼の人気が出た背景には、関西ローカルの二つの番組の影響が大きかった。それは「そこまで言って委員会」(読売テレビ・NTV)と「ムーブ」(朝日放送・ANN)である。後者はすでに打ち切られたが、同時間帯の「ちちんぷいぷい」(毎日放送・TBS)と人気を二分していた番組だった。

誤解を恐れずに言えば、昼どきにヒマな主婦や女子大生が「ぷいぷい」を見て、大阪目線の社会問題を考えたい男性は「ムーブ」を見ていた。私自身はどちらも好きだったので、よくザッピングしていた。「ムーブ」のゲストコメンテーターには橋下氏だけでなく宮崎哲弥氏や勝谷誠彦氏も出ていた。他局の「そこまで言って委員会」でお馴染みのメンバーだ。当時の私の関西メディアに対する雑感だが、関西ローカルは各系列局のイデオロギーよりも、「東京が言わへんようなホンネの番組」というポリシーが優先されていたと思う。当時、それをYoutubeを介して見た関東の人も多ったのではないだろうか。

橋下氏が単なるタレント弁護士を超えて、全国区で大きく注目を集めるきっかけとなったのは「光市母子殺害事件」だったと思う。赤子と母親を殺した少年の弁護側の主張は「(殺しても)ドラえもんが何とかしてくれると思った」だった。世間の関心は、事件の残忍さ以上に少年法や法廷審議の在り方に及ぶ。橋下氏は「そこまで言って委員会」にて「あの弁護団に対してもし許せないと思うなら、一斉に懲戒請求をかけてもらいたい」と発言。番組内で拍手喝采がおこった。

私を含め、多くの視聴者は「懲戒請求」の存在すら知らなかったと思う。テレビ内の拍手は、弁護士が弁護士特権への欺瞞を表明したことへの評価でもあった。この瞬間、橋下氏は「奇抜な弁護士」から、異様な既得権益層に対峙する「良識ある常識人」へのイメチェンに成功したのである。

公人となった橋下氏のその後の顛末は、もはやここで記すまでもない。ただ、知事になる前から、大阪の西成の子供のあいだでも、橋下氏が「飛田の弁護士」だったことは有名だった。二年前、イタリア人記者にこれを指摘されたときの橋下氏の回答が「料理組合自体は違法でもない」だった。あまりにもナイーブな反論に記者会見場には失笑がもれた。

子供が多いユニバーサルスタジオのすぐ隣で放射能ガレキを燃やすことを強行したとき、まず維新内外から彼の良識が疑われ、ブレーン達が彼から離れはじめた。JR大阪駅で反対デモをした阪南大の教員をJR西が通報して、かなり強引なやり方で逮捕された。当然、ガレキ(とその補助金)を受け入れたい橋下氏は全く問題視しなかった。ちなみに、国際社会もあきれかえったこの愚行を指示したのは、当時環境大臣を務めた細野豪志である。

原発推進列車JRは「節電のため」と称して券売機や車内灯を止める一方、膨大な電力を食らうリニアモーター計画を推し進めている。また節電のために浮いたコストが利用者にどのように還元されているのかまったく説明がない。人口が激減して新幹線ですら存続が危ぶまれているこの国で、無謀な巨大公共事業が展開されている。例のオリンピック会場もまたしかり。

そして、一市長が慰安婦問題などの国政案件に首を突っ込むなかで、さきの大阪の飛田に関する質疑で自身の足下をすくわれる恰好となった。挙げ句の果てに在特会に「飛田にかえれ」と捨て台詞をはかれてしまう。飛田云々以前の問題として、その幼稚な論戦内容に橋下氏の常識が疑われる結果となった。

先月の敗退を受けて、原因は高齢者や低取得者層による数の勝利でしかない、と匿名掲示板2chで揶揄されているが、実態はそうではない。橋下が嫌いな(もしくは関心が無い)若年有権者層は選挙にすら行っていない。橋下氏の言動によって女性の支持がかなり失われたこと、彼のヘリクツを擁護してくれたはずの知識階層からも総スカンをくらったことが大きい。もともと大阪でしか強くなかった維新が、反対派PR費5千万円に対して一桁違う5億円のキャンペーンをしかけても負けたのである。一万票の票差の意味は、惜敗というよりは完敗だったと言わざるをえない。いづれにせよ関西電力の料金値上げも牽制できない政治力で都構想など夢のまた夢だったのだ。

昨今のニュースでは、飛田も中国人ツアー客の爆買いがすすんでいるようだ。先進国で唯一エイズ患者が増加傾向にある国、日本。そして、大阪という都市では、シャワーすらない部屋で中国人が日本人女性を買うのだ。なぜシャワーがないのか? それはシャワーがあると法的に「料理店」でなくなるからである。第三国のスラムのような劣悪な衛生環境のもと、体裁だけ繕ったシステムだけが今日も廻る。

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