媒介、其れ乃ち神なり。
スターウォーズのエピソードⅥでさ、C-3POがイウォーク族に神様と間違われるシーンがあるんですね。ボディが金ぴかだから(ちなみにこのデザインはフリッツ・ラングの「メトロポリス」のオマージュです)。そのあと誤解が解けるんだけど、そこでC-3POは、スターウォーズのあらすじをイウォーク族に語ります。彼はプロトコル・ロイドといって、通訳ロボなわけです。
でも、単なる通訳者を超えて、スターウォーズという神話を生き生きと語る彼は、まさしく民族と民族を取りまとめる強力なグルなのだ。この瞬間、このメディアでしかないC-3POは、メディエーター(調停者)となり改めて神性を帯びるんですね。
マルクスが『資本論』の草稿で、民衆と神のあいだを取り持つ予言者が、事実上の神となる・・・みたいなことを言っていたけれど、まさにこのことだと思う(マルクスは、生産と消費のあいだを取り持つ銀行が資本経済の実質的な神なのだ、ということの隠喩としてこれを用いた。しかし『資本論』の内容は、産業資本が強調されたのでこの「媒介者=神」というテーゼは影を潜めることになる)。
これに関して、1963年の映画『未知への飛行』は、アメリカとソ連の核戦争の危機を描いたものなのだけど、物語ではアメリカの大統領とソ連の書記長の電話会談の間を取り持つ通訳が良い演技をします。原作の小説バーディック&ウィーラーの『未確認原爆投下指令』でも、なかなか良い描写です。バックは通訳の名前です。以下引用。
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とっさにバックは決心し自分の翻訳を送った。
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大統領がふたたびなにか言おうとした。だが、バックは、われながら驚いたことに、思わず手をあげて、それを制していた。電話の相手は、声を出しながら考えごとをしているから、いまは邪魔しないほうがいいと、バックは感じたのだ。
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大統領は、おそろしく甲高い、これもほとんど平静さを失った声で叫んだ。バックの翻訳が、フルシチョフの声におっかぶせるように、流れ出した。気がついてみると、彼自身もまた、拳でテーブルをたたき、同じ言葉を何度もくりかえしながら、大声で叫びつづけているのだった。
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映画の方でも、後半の通訳(左側)は、大統領に「水のポットを取って」と指図してます。自分でとれよw