音の幾何学。
昔から絵を描くのはそんなに好きではなかったのだけれど、デザイン画は大好きだった。これと同じような意味で、音楽は嫌いだったけれど、音それ自体は好きだった。ピアノの音とか、全然ノイジーでうるさく聞こえたね。濁っているよね。シンセサイザーのピアノの音色が好きです。最近で言えば、カメラのシャッター音とか画質以上に気になる。オリンパスE-1のシャッター音が高級感のある音で大好きです。
今度、動画を編集しないといけないことになって、SEやBGM用にシンセサイザーがいるかなあと思い、大阪心斎橋のイシバシ楽器へNORD LEAD4を弾きに行った。触ってみて、正直うーん・・・という感じで、とにかく90年代から電子楽器市場はフリーズしたままなんだなあ、と。まあ、そりゃそうだ。だって色んな音色が出せたとしても、人間が心地よいと思う音色は限られているんだもの。
リズムマシーンでも、いまだに80年代のローランドTR-808を模したレプリカが「新製品」として発売されていて、またオリジナルの中古もおそろしいプレミア価格で取引されている。この背景には、あの心臓の鼓動のような、芯があって丸みのあるバスドラムの音が時代を超えてだれの耳にも心地よいと感じるからだ。それは実際のドラムの楽器音とはほど遠い音だけれど、そういう抽象化した音の方が感性に直接響いてくるという意味で、普遍的・幾何学的リアリティを持っている。要するに、実写版「魔女の宅急便」よりもアニメの方にリアリティを感じるのと同じだ。あ、ちなみにコレ、JKのキキです。たぶん公式w
NORD LEAD4には、新しい音色や表現手法も加味されているが、あの声っぽい音色?は奇をてらっているだけの音で、ノードっぽくないなと感じた。うーんコレジャナイ!じゃあノードらしさって何だよ?ってことになるんだが、それは音楽性に対してプレーンであることがノードの哲学だったような。あくまでもシンセは音の幾何学を追究して、音楽性はプレーヤーに任せます、って感じ。要するに最新作の4は、2Xにアルペジエーターとエフェクターを入れてくれるだけでよかったんだよw 心地よい音それ自体はもう出尽くしている。だから、シンセは音色エディット機能よりも、音像とかアルペジエーターの微調整をどれだけリアルタイムかつ直感的にできるかの方が今や重要だと思う。
なーんてぶつくさ思っていたら、NORD LEAD A1という新機種がそろそろ日本でも発売されるらしい。「4」の発売からまだそんなに期間が空いていないのにA1が出るのは、やっぱ世界中のミュージシャンからコレジャナイ!ってクレームが来たんだろう。デモを聞く限り、私はA1の方が良いかな、と思った。